青い星を君に捧げる【壱】
記憶の中から私を引きずり出したのはさっきまで遠くにいた風間くんだった。私を片手で抱き上げて全力で咳き込む彼。


「テメェがどっかで野垂れ死ぬのは勝手だが、俺の目の前でされるのは気分がわりぃ」


「……ありがと。いきなり深くなってびっくりした」


「のわりには、大人しく沈んでたな。……ま、どーでもいいけど。お前にも女らしいところあるのな」


私を浅瀬へと運ぶと風間くんは容赦なく腕から落とした。


「ちょっと湊!!パラソルまで運んであげなよ!!大丈夫?波瑠」


「彼方…平気。歩ける」


手を回そうとした彼方を軽くあしらい、1人パラソルの影に入る。……あのままあっさり死ぬなっていう彼女の思いが風間くんに届いたのかな。


始めは私を気にしてビーチバレーをやっていた4人だけど(風間くん以外は、かも)次第に激しい点取り合戦になる。その光景をボーッと涼みながら見ていた。


「やっほー美人さん。連れの男どもに放っておかれてるのかな?」


振り返るとそこには金髪の美男子。というか……なんか顔が慎に似ている?


「ああ、気づかれちゃったかな?俺あそこの慎と兄弟なの。あっ俺と話したことはあいつに秘密ね」


口元に人差し指を当ててシーっとウィンクしてみせる。そうか、ここは慎のお父様の別荘なんだからご家族がいても不思議じゃない。


「きみ彼らのお姫さまなんだっけ?」


「…回りくどいのは嫌いなの」


「へぇーきみ高2でしょ、一応俺の方が1個上だからね。」


後ろに立っているのが疲れたのか隣に座って影に入ってくる。何が目的なの。


「私ダブってるから年齢は貴方とおなじはずよ」


「清楚系で偉い子ちゃんに見えて実は中身は全然違うのかな」


私の髪を1束掴みクルクルと遊ぶ。そして耳元に唇を近づける。


「綺麗な髪…でもゴールドの方が合いそうだ」


「…ッ!!」


____パンっ

咄嗟に男の手を弾く。なんだこいつ。ホントに何が知りたいの?


「おーこわ。じゃ、また会おう」


隣に腰掛けていた男が立ち上がり再び日の元へ。その時男の耳元の何かが日光と反射する。


____チリン


金色の小さな扇子が2個連なったピアス。男の姿をジッと目に焼きつける。


「おーい!波瑠!体調良くなったなら混じって遊ぼぉ〜!」


「…うん、今行く」

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