青い星を君に捧げる【壱】
私はどうして見逃していたんだろう。初めて会った時からそれは目の前にあったというのに。




夏休みも半ばに差し掛かっていた暑い日。幹部たちは相変わらずエアコンの効いた涼しい幹部室で優雅に過ごしていた。


____カシャン


「杏里、スマホからなんか落ちたよ」


落ちたものを拾い上げようとした。そこで目に入ったものが私の手を止めた。これは…。

『これね、彼氏とお揃いなんだ!えへへ。二人で出かけた時に採った花で作ってもらった世界に一つだけのものなの!!』


「っは?」


「波瑠?どうかしたか?」


「おまえっ!これをどこで手に入れた!!」


落ちていたもの、ドライフラワーのキーホルダーを手に取り杏里の顔の前に掲げた。

「どこでって…昔の彼女が勝手にスマホにつけたやつだよ。切れたんならもう捨てr「ふざけるな!!てめえ自分で何言ってんのかわかってるのか!」


杏里の胸ぐらに掴みかかり片手で杏里を背中から床に叩きつける。視界がぼやける。


「ちょ、ちょっと。波瑠、落ち着いて」

私と杏里の間に割って入って彼方はこれ以上私が手を出さないようにする。


「これをあんたに渡した女の子の名前。言ってよ」


「……忘れた。1年前の女だ、覚えてるはずない」


本気で怒りが込み上げた。大人しくしていた私に油断していた彼方を避けて杏里めがけて拳を振り上げる。


「波瑠!!やめっ「そこまでだ」


「離して慎。私はものすごく怒ってるの。この男を殴らないと気が済まないの」


振り上げた腕を掴んだのは慎だった。振り下げるために力を込めるも、それに比例して抑える力も増す。


「……お前の手を傷つけたくない。それに、何にも思ってなかった女がスマホつけたものを一年もつけ続ける男なんていると思うか?」


それを聞いてフッと腕に込めた力を抜いた。私が落ち着いたのを感じたのか慎も掴んでいた手を離す。


「杏里、話をしようか。彼女の話」
< 70 / 130 >

この作品をシェア

pagetop