青い星を君に捧げる【壱】
《side.久我杏里》
これは2年前、俺が中学2年生の時の話。
この頃俺は青龍に属してなくて、むしろ位置的に言えば西に住んでいた。


あの頃俺は今よりもっと荒れていて、学校にも1年の時はほぼ顔を出していなかった。

流石に今日は行ってみるか、と思い腰を上げて気まぐれに午後から学校に行ったのが始まりだった。


____ガラガラ

教室に入るとそこには生徒もガミガミうるさい教師もいない。


「あり?今日休校?」


「あの、5・6時間目は体育でみんなグラウンド行きましたよ」


声の方を見ると1番後ろの廊下側。俺のいる所からだとちょうど死角に1人座って勉強している女の子。


「体育ぅ〜?んだよせっかく来たのによ」


「えっとB組に何か用事ですか?って今授業中ですけど!!」


騒がしくて俺の周りにはいないタイプの女の子に興味を持ってしまって、彼女の前の空いていた席の椅子を引っ張り出して目の前に座る。


「俺一応B組なんだけど。久我杏里、知らない?」

「あなたが久我くん!毎朝出席確認の時にいない人」


そりゃいない人で合ってるけど…俺のことそんな覚え方する女いない。面白いやつ。


「で?そういう君は?こんな堂々サボってんの」


「t、違います!決してそのような悪いことをしているのではなくて!えっと、昔から激しい運動をしちゃいけないんです。だからサボってるとかではなくて……」


「アハハハ!わかってるよ、そんな慌てなくても、アハハ」


最初にこの席に座った時からわかってた。律儀に教師もいないのに渡された課題プリントを机に広げている。


「あ“!おいその後ろ姿は久我じゃないのか!」


教室の前ドアから入ってきたのは担任。今の時間授業ないのかよ。

「やっべ」

俺の一年の頃からの担任で、この教師だけは俺を見かけると熱血的な説教を始める。普段居留守したりするのをグチグチ話し始める。


「おい久我。話したいことが盛りだくさんあるぞ」


「俺のことを後ろ姿だけでわかっちゃうなんて、俺のこと大好きだねせんせ」


「ばか言ってないでついてこい。今日は二時間みっちり話せてもらう」


ウゲーと担任に舌を出す。ちぇ、担任に会う前に帰る予定だったのにな。


廊下から俺がついてきてるか確認してる担任を見て、諦めて椅子から立ち上がる。ドアをくぐって廊下に一歩踏み出してから思い出す。


「ねえ君名前は?」

ひょこっとドアの柱に掴まり身を乗り出して女の子の顔を見る。


「あすか!泉明日歌です!」


ガタガタと椅子を鳴らして勢いよく立ち上がりながら名前を大声で言う。


「ハハッ覚えた。じゃあまたね、明日歌チャン」
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