青い星を君に捧げる【壱】
「うわぁ…広いんだね」

「初めてきたの?」


「うん…すごいね。どこから行く?」

初めてきたのか。それじゃここを選んで正解だった。水族館とかデートベタスポットも考えてみたんだけど、デートと呼んでいいのかも分からないような曖昧さなのに気合が入りすぎてるか…と却下したのだ。


「適当に店回ろう。俺に似合うものとか合ったら言ってね」


それから服をお互いに見て回って、俺は明日歌おすすめのジャケットを買った。お昼になってレストランに入った。


楽しい時間はあっという間に過ぎていく。その言葉はもちろん正しい。


「そろそろ暗くなってきたし帰るか…」

「あのさ、最後にあそこの雑貨屋見ていい?」


最後に行きたいと指差したのはアンティークなものが売っている雑貨屋だった。明日歌と店内をゆっくり回る。


「これかわいい…」

明日歌が目を輝かせて見ていたのはドライフラワーが入った小さなキーホルダー。近くのポップには『カップルに大人気!お花を摘んで二人だけのもの作れます』と書いてある。


「入れる花は自分達で持ってくるんだな」

「そうだね…残念だけど、諦めよう」

明らかに落ち込んでないはずの尻尾がシュンと垂れる幻想が見える。


「明日歌って門限は?」


「えと19時」

俺は腕時計を確認する。今は17時30分。この近くに確か自然に花が咲いてる場所があったはず。

「花、取りに行こ」


繋いでいた手を再び握り直し、ショッピングモールを飛び出した。


「あった、ここだ」

幸い夏だったこともありまだまだ明るい。しゃがんだ明日歌の隣に俺も腰を下ろす。


「ありがとう杏里くん。杏里くんといると新しいことばっか起こるよ」


「新しいこと嫌い?」

「ううん、大好き!」


小さな花を見て愛おしそうに言うその表情を見て俺の心拍数は急上昇する。違う、勘違いすんな。俺に言ったわけじゃない。

だけど俺はこの瞬間気づいちまった。


明日歌が好きだってこと。



「気にいる花はあった?」


「これとか可愛いです」

優しく摘んでチョコンと手のひらに乗せたのは小さな白い花。

「じゃあそれにしよう。俺も一緒に作っていい?」

明日歌が摘んだ隣のものを採る。

「もちろんです!お揃い嬉しいです」

それぞれの花を握ってショッピングモールへと戻り、さっきのお店に戻る。


「この花でドライフラワーのボトル型キーホルダーお願いします」


「はい、こちらの用紙に必要事項の記入お願いします」

どうやら各々のものに名前と言葉も入れられるみたいだ。
< 74 / 130 >

この作品をシェア

pagetop