青い星を君に捧げる【壱】
明日歌と付き合い出してから数ヶ月、夏には沢山出かけたし秋には紅葉を見に行った。

そして季節は流れて冬になっていた。

冬休みに入って、俺の家でお家デートをしていた。隣には映画の途中で眠くなってしまった明日歌が俺の肩に頭を預けてお昼寝中。


「……ぃゃ。いか、な…いで」

「明日歌?明日歌…起きて」

時々明日歌はこうやって何かに魘される。その度に夢の中だとしても彼女を苦しめる奴にイラつく。


「……あんりくん?」


「うん。俺が明日歌の杏里くんだよ」


目尻に溜まっている涙を優しく拭う。まだぼんやりとして夢の続きにいるように悲しげな表情を浮かべる明日歌を正面から抱きしめる。

「あのね、杏里くんが私から離れていっちゃった。他の人と腕を組んでて…それで……その」


「落ちついて。俺はちゃんと明日歌の目の前にいるだろーよ」

俺が一方的に抱きしめていたものから、明日歌も俺の背中に腕を回して服をぎゅっと弱々しく握る。


____ちゅ

明日歌の耳元に触れるような口づけを落とす。そんな夢の中の俺じゃなくて、今抱きしめられてる俺を見て欲しい。

「あのね、私杏里くんのこと大好きなの。杏里くんが死んだら私も死ぬよ」


「そんなの俺もなんだけど。俺も明日歌が死んだら一緒に死んでやる」


それを聞いて明日歌はくすくすと小さく笑う。…別に冗談で言ってるわけじゃないんだけど。それぐらい明日歌に溺れてるってこと。


「だめだよ、杏里くんは死んじゃ。私が三途の川渡らせないんだから!」


「人はいつか死ぬけどな。でも俺は老衰がいいかな」


「そう、人はいつか死んじゃう。それが遅いか早いかだけ」

「……泣き虫」

震える明日歌の体を今よりも強く抱きしめる。

この日はずっと明日歌が離れなくて、ひたすら抱きしめてあげてた。


その翌日から明日歌は体調を崩したらしくて、入院するほどだったという。お見舞いにも行きたかったけど、明日歌は頑なに病院を教えてくれなかった。


あの日家で会ってから一度も会うことなく冬休みが明けた。流石にもう退院してるだろうと学校に行けば明日歌の姿は見えなかった。


熱血担任に聞いても明日歌からの口止めが入ってるらしく一つの情報も得られなかった。


そのうちメールだけは毎日くれていたのに、とうとうそのメールさえも届かなくなった。


学校に行っても隣は空席で、それが俺に現実を突きつけてきて虚しくなるばかりで登校することもやめた。


そして彼女のいない3月を迎えた。
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