青い星を君に捧げる【壱】
冬休みに入り、杏里くんの家でデートした日。私は不安で仕方なくて杏里くんに抱きしめられながら泣いた。


このデートが終わったらもう杏里くんに会うのはやめて病院に行く。これはママからのお願い。


杏里くんが私を嫌いになるくらいひどいメールを送って別れを告げた。彼にはこの先の人生がまだまだある。この感情は私が杏里くんの分まで持っていく。


「明日歌…やっぱり彼に本当のこと言ったら?辛い思いは二人で分け合わないとお互い苦しいだけだよ」


お見舞いに来てくれていたハルがそう言った。友人たちの中で唯一ハルにだけは病気のことを伝えていた。


「毎日泣いて苦しんでる明日歌をもう見たくない」


ハルの言葉が私の背中を押した。この時3月後半。1月はとっくに過ぎていて、先生は最後にと、半日だけ外出許可をくれた。


「じゃあ私適当に過ごしてるから終わったら連絡してね」


ハルが私の車椅子を押して待ち合わせの場所まで連れてきてくれた。14時を過ぎて、15時を過ぎて…気づけば17時になって。


やっぱり私なんてもう好きじゃないよね。


『もしもし、明日歌。そろそろ話終わった?』


「…こな、かった。はるぅ、ごな“がっだ!!!」


涙が流れ続ける。あんなに毎日泣いたのに枯れてくれない。

『わかった。今迎えに「あぶない!!!!」


___キィイイイガシャン!!!キィキィ


後ろから大きな衝撃を受けて車椅子ごと吹っ飛ばされる。何が起きたの。

手に握りしめていたスマホが近くに落ちていて手を伸ばす。


『明日歌!明日歌!!大丈夫なの!?』


大丈夫っていつもみたいに言いたいけど、無理みたい。さっきの手を伸ばしたので力尽きた。


「ハル、お願い聞いてくれる?」


『なんでも聞く!!聞くから、今行くから!!』


ありがとう、ハル。だいすき。これで安心できる。


『彼を探して、私の話…して」


『する、するから…するから、そんな最後みたいな話しないで!!』


ごめんねハル。最期になる。スマホをもつ力も無くなって、するりと手から落ちる。


目に入ったのはスマホについたドライフラワー。最後の力を振り絞ってそれを撫でる。


杏里くんはかっこいいから、きっと他の誰かとこの先の道歩いていく。その時の一瞬でいいから私のことを思い出してくれないかな。


私との思い出を忘れないで。枯らせないで。




『May a miracle happen to you up to my minute』


杏里くんに送った言葉。


『私の分まで貴方に奇跡が起こりますように』


私に人を愛するという幸せを教えてくれてありがとう。

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