青い星を君に捧げる【壱】
《side.久我杏里》

__明日歌が死んだら俺も一緒に死んでやるよ

ごめん、遅くなったけど俺も今行くよ。1年寂しい思いさせてごめんな。


「おい、こんなとこで死ぬな。気分わりぃ」

海に2、3歩入ったところで後ろから湊に声をかけられる。なーんで来ちゃうんだか。


「…好きな子を一人にさせるなんてお前にはできるか?湊」


「ダァかぁらー!!それ以上行くなバカがよ!!」


首をガッと掴まれて後ろに倒され全身べちょ濡れぬなる。湊が近づいてくる。


「テメェの愛する女が死んで欲しいなんて思うかよ!!ンなわけねぇだろうが!
オマエのこれからやるべきことはな、老いぼれジジイになるまで必死に生きて『いい人生だった』って言えるようになってから死んだやつに会いに行くことだ!!」


そばに立っている湊を見上げるとその後ろには波瑠、彼方、慎もいた。


「それで辛くなった時に助け合うのが仲間だ。俺たち仲間だろ?」


「……みんな、ありがとうっグス」


高校生の男が海でべしょ濡れになりながら大泣きなんてみっともない。湊も笑ってる。今はダサくたっていい。これからちゃんと地面に踏ん張って歩いていく。


「__もういいよ、杏里。明日さ、明日歌に線香あげに行こう。絶対明日歌、喜ぶから」

俺はしゃくり上げながら波瑠の言葉に頷く。


「その新幹線の切符、俺の分も追加な」


湊が手を上げて言う。それに続いて彼方と慎も。結局みんなで行くことになるのか。


「騒がしいって明日歌が笑いそう」



辛いこと苦しいことは誰もが持っている。でもその思い出はちょっとしたことで変わると思う。

仲間ができて、大切なものが増えていく。誰かの思いをつなげていく。


そうしていくうちにいつかその苦しい、辛い記憶も新しい価値観で塗り替えられて…。


忘れることなんてできやしない。


だからこの思いを抱えて、俺は生きていく。

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