青い星を君に捧げる【壱】
《side.本郷波瑠》

杏里と別れて駅まで歩いて向かっていた。


「波瑠はさ、転校してきたのは杏里を探すためだったんだよね?」


彼方は何かを探るように尋ねてきた。私は足元に転がっていた石をコツンと蹴飛ばす。あ、自販機にあたっちゃった。


「うん、そうだよ」

「じゃあ東に帰っちゃうの」


そうか、それが聞きたかったんだね。立ち止まった彼方は寂しそうな目を私に向ける。言葉を紡ごうとした時、慎に手首を掴まれた。

「行くな」


「ふははは!!そんなこわい顔しないでよ慎!行かないよ」


掴まれていない方の腕を伸ばして慎の眉間にデコピンをお見舞いした。そのことに不貞腐れたのかムスッとした表情をする慎。


「大丈夫、私はどこにも行かないよ。それに前の学校の制服だって彼方に没収されちゃってるしね」


先日私が西に行った週に彼方は前の学校の制服を持ってくるよう強要し、無事没収されていた。


未だ掴まれている慎の指を一本一本優しく離していく。


「…慎が前に聞いたじゃない。“俺たちはお前の大切なものに入ってるか“って」


狂乱との抗争後、慎が私に聞いたこと。


「……ああ」


「あれ永久に有効だから」


「なぁーんだ!!心配して損しちゃった!」


彼方は私の背中に飛びついて笑いながら言った。前を見れば慎も目を細めて微笑んでいた。


_________
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翌日、青龍倉庫幹部室。慎のスマホの通知音が鳴るたびに彼方がビクついていた。


____ピリリ、ピリリ


「はい。…ああ……わかった」

耳からスマホを離した慎が私たちの方を見る。

「よし、準備しろ」


「うっしゃああ!!」


風間くんが喜び、1番に幹部室から飛び出していく。


「彼方、英治さんにも連絡を」


※英治さん→カフェ『ミモザ』の店主
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