青い星を君に捧げる【壱】
これは杏里の騒動後。夏休みの、とある一日を切り抜いたものである。


「彼方とぉ〜!」
「杏里のぉ〜!」


「「お悩み相談室ぅ!!」」


「おい、まーためんどくせぇのが始まったぞ。誰か止めろ」


ソファに横になっている湊が鬱陶しそうに寝返りを打ちながら言った。


このコンビを止められる人がいたら神なんだけどな、そんな人少なくともこの青龍にはいない。


「さて、今回お悩みをくださったのは青龍幹部K・Mさん!お便りありがとうございます」

「あ“あ“??」

青龍幹部のK・Mさんて…湊じゃん。湊は首をぐいと曲げて司会者二人の方をウザそうに見る。


「どうやらK・Mさんは“女嫌い“で日々怒っている場面を多々見かけますが。実際のところどうなんですか」


杏里は手をマイクのようにして湊の方へと向ける。その後ろでは彼方も興味津々に頷く。


「…知るか」

ぷい、とソファの背もたれの方に顔を戻してしまった湊。


「っということで!そんな湊さんのために我々頑張ります。題して“女嫌い克服委員会“!!」


「勝手に話を進めんなっ!」


ソファから飛び起きキレッキレのツッコミをする湊の腕は、悪い顔をしている司会者二人に捕まる。


「最初からリアルな女の子だとハードルが高いだろうから、まずは二次元から!」


湊は二人に連行され、テレビの前に座らされる。そしてヨイショヨイショとコントローラーを握らされ、テレビの電源がついた。


「さあ湊よ、どういう女の子が好みなんだ」


指を動かさない湊を見て、セカンドコントローラーで適当に杏里がナイスバディな女を作っていく。


「待って、待って。きっと湊の好みはこっちだよ」


私は杏里からコントローラーを拝借してキャラを作ってゲーム(たぶんエロゲー)をスタートさせた。


「オイ。何でお前まで乗り気になってんだ」


「いいじゃん、楽しそうだし」


開始されたエロゲーは最新作だったこともあり、まるで本物の女性のようだった。


「へぇ最近のゲームはすごいんだね」


「ていうかこのゲームめっちゃ感動したぁ」


彼方は私の腕に抱きついて目を泣き腫らしている。確かにこのゲーム、他のエロゲーより感動寄りだった。


…その頃。主役であったはずの湊は二時間の私たちのゲームに付き合いきれず眠っていた。
< 93 / 130 >

この作品をシェア

pagetop