青い星を君に捧げる【壱】
《side.本郷波瑠》

夏休み最終日の金曜日。つまり8月の終わり。8月31日は重要な日である。


「今年の幹事は毘沙門天が一家、斉藤組が勤めさせていただきます」


日本の裏社会、つまり反社会勢力の人間ならこの三つのうちどこかの勢力に属していることがほとんどだ。


一つ、天沢家率いる『毘沙門天』


二つ、七扇組率いる『弁財天』


三つ、本郷家率いる『大黒天』

これら合わせて三天と呼ばれている。


三天の中心にある三家が8月31日に集まって会議をする、それを『御三家会議』という。


御三家会議の出席者は三家の当主とその子供、側近二人まで。そして幹事として三天の中のどこかの家がランダムに選出される。



御三家最大の特徴は子供たちは姿を決して見せないこと。そして名前も婚約者以外には20歳を迎えるまで明かすことはない。


私、本郷波瑠は本郷家のそれも宗家の人間である。この会議では「朧月の姫」と呼ばれている。


姿は御簾で隠し、声も極力出すことはない。ただ我が家の当主の後ろにいるだけだ。


____カコン


「今年も誰一人と欠けることなく集まれて嬉しいものだな」

もう何十回も会議に出ているので声だけで誰かは大体わかる。今のは天沢家の当主。

結構な年齢であるが代替わりはまだなされない。理由は簡単。一人息子が死んで、次の後継ぎが孫たちだからだ。


「なぁにが嬉しいだ頭の硬ぇだジジイども。さっさと死んで若い奴にその座を渡せよ」

この生意気なのはお恥ずかしながら我が父、本郷家当主、本郷一(ハジメ)。この三家の中では1番若い。



なぜこのような態度を取れるのか。それは本郷家が三家で最も構成員が多く、財力・武力・影響力があるからだ。その差は圧倒的なので他の二家もどうにもできないのだ。



「口が悪いぞ。我々は喧嘩するために集まったワケではあるまい」


比較的穏やかで天沢家と本郷家の仲を取り持つのが七扇組である。


「そんな啖呵切っておるが、本郷。後継ぎはどうするのか」



「なんだ、その話好きだよな。そんなに心配なら天沢の次男坊くれよ」


「ほう…天沢と本郷の子同士が婚約とは面白いじゃないか」


そんなの嫌だ…そう言いたかった。だけどそんな拒否権は私にはない。全ては当主の命令に従うしかできない。


「いいだろう。契約書を」


父は側近に契約書を渡すよう促す。
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