青い星を君に捧げる【壱】
「うちの男が本郷に婿入りとは、長生きするものだな!まさか深窓の令嬢、朧月の姫が婚約とは!ハハハ」

かわいい孫の婚約が本郷家で将来安泰、嬉しいのか笑い飛ばす天沢家当主。


__朧月の姫。それは私の“月桂樹”とは他にある反社での呼ばれ方だ。

「結婚は朧月の姫が“高校卒業“したらだ」

「たしか姫とうちのは同い年だったか」


天沢家後継ぎの弟は“桃園の君”と呼ばれる男だ。


「それならば………___か」

この家に生まれた時点で望んだ相手の結婚できるなんて思っちゃいない。だけど、いざそうなると、悔しい。


「……は___からな」


女で生まれてきたことをこういう時に憎く思う。


それから例年通り会議は続き、つい先ほど終わって今は着物から着替えるために控室へと移動してきていた。


「姫、いいんですか。このままだと」


私の側近として付いてきてくれていたのは匡だった。着替え終わって休んでいた私にそう問う。


「いいの、私が頼み込んだってあの方は認めてくれない。大人しく受け入れるしかない」


正座して足の上で組んでいた手を擦る。匡は部屋の隅から擦って私の目の前まで来る。


彼が私の望んでいることはわかってる。だけど私は意地悪く知らないふりしてるだけ。


「…俺はお前のモノだ。お前が願えばどこへだって連れ去ってやる」


「ふふふ、ありがと。じゃあ一つお願いしていい?」

「なんだ」

「今夜は匡のおじいちゃんたちの家に泊まりたいな」


幼い時から私と匡は匡の祖父母のお家にお世話になっていた。その地域はちょうどどの裏社会の勢力も及んでないほど田舎で、御三家の子供たちは大抵そこの小学校に通っている。


「わかった、連絡しとく」

__________
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__


「あらあらハルちゃん、久しぶりだねぇ」

私と匡は数年ぶりにその地を踏んだ。2年とかぶり。

「二人ともお元気そうで何よりです」


おばあちゃんが両腕を広げて私を迎える。吸い込まれるようにその胸に飛び込んだ。


「匡…お前も大きくなったな!」


おじいちゃんは後ろから荷物を持って着いてきた匡の手から物を攫うと奥へと持っていった。


「ささ、今日は疲れたでしょ?あがりんしゃい」


匡の祖父母だからもちろん御三家会議のことも知っている。おじいちゃんは前当主の側近をしていた。
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