月の光~時空を越えて~
近くに涼めるような場所は...


「あっ、そうだ。古本屋。あそこならクーラーも効いてるし。」



重い足を動かして、近くの古本屋へ向かう。
小さい頃から通っていたが、最近は忙しくて行けていなかった。






歩き始めて5分ぐらい...
風鈴の音がする。


「チリン、リリン。」


懐かしい...



古本屋なのに、なぜか暖簾があるこの店には他と少し違う雰囲気がある。



少し古くさいような、それでいて現代っぽいような..



暑さも忘れて、暖簾の前でぼーっとしていると
古本屋のおじいさんが声をかけてきた。



「あら、あんたみたことある顔だね。あ、そうだ綺桜ちゃんじゃないか。そうだろ?」




「おじさん、覚えてたの?」




「そりぁそうだよ。小学生の頃よく来てたじゃないか。」



小柄で上品な雰囲気のおじちゃんは、優しい笑みを浮かべた。





「まぁまぁ、綺桜ちゃん入りなさい。暑いだろう?」




おじちゃん、ありがとう と言うと、おじちゃんが暖簾をめくって、こっちこっちと手招きをする。




本を読みながら、かなり年季の入ったソファでくつろいでいると、おじちゃんが冷えた麦茶とお煎餅を持ってきてくれた。

「それにしても見ない間に大きくなったねぇ。」

確かに。ここに来るの何年ぶりだろう...

しかも、べっぴんさんになって とおじいさんが笑う。

懐かしいなぁ。おじちゃんはあの頃から全く変わっていない。
優しげな瞳と、紺色のエプロン...

心が癒されるような、ほっと温まるような、そんな気持ちになった。
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