月の光~時空を越えて~
「じゃあ、おじちゃん、帰るねー。」
おじちゃんが店の前まで送り出してくれる。
「またいつでもいらっしゃい、綺桜ちゃん。」
目を細めて微笑むおじちゃん。
「チリン、リリン」
空はもうオレンジ色に染まっている。
しかし日が暮れても、まだまだ蒸し暑い...
「うぅ、暑い。」
ぐーんと背伸びをして、家に帰ろうと歩き出したそのとき、
「ん?」
古本屋のベンチに誰かが倒れている。
「えっ、ちょっと。大丈夫ですか??」
肩を揺すると、倒れていた男性が顔をしかめながら目を開く...
そしてがばっと勢いよく起き上がる。
「ここは...どこだ?私は一体何をしておる。」
なにこの話し方...
笑ってはいけないと思いながらも、侍のような話し方に思わず吹き出してしまった。
「ぶはぁ。あは、あはは。あっ、ごめんなさい、つい。」
と謝ったものの、男性はこちらをじーっと険しい表情で見つめている...
見つめられたまま、沈黙は3秒..10秒...と続いていく。
なんでこんなに見てるのよ。
「えーっと、あの何か顔についてます?」
「お主。なぜそのような格好をしておるのか?
それは肌着ではないか?」
肌着?なに言ってるの...?
今は夏だしみんなこんな格好じゃん
と不思議に思っていると
「もしや、着る服がないのか?しかしそれにしては痩せておらぬな。」
「ななな、なによ!失礼な。」
デリカシーなさすぎでしょ。
初対面の人に向かって言う言葉じゃない!
「すまぬ。不快にさせてしまったなら謝る。」
あまりにも素直に謝ってくるので、なんだかこっちが悪者気分だ。
「別にいいですけど。あなたこそなんでそんな格好を?コスプレかなんかですか?」
少し長めの髪はきちんと結ばれて、時代劇に出てくるような格好をしている。
「コスプラ?聞いたことのない言葉だな。」
まさか、正気でこの格好してるの?
コスプレを知らないなんて...