月の光~時空を越えて~
「えーっと、まずなんで倒れていたか教えてください。」
「それが私もよく分からないのだ。
気づけば、ここで。」
もしかして...記憶喪失とか!?
頭打ったとか、事故に遭ったとか
でも、キズもないし、意識もしっかりしてる。
「あ、じゃあ、今日は何月何日か分かります か?」
「たしか、嘉永6年 9月3日だ。」
「か、かえ、い?いまなんて?」
「嘉永6年だ。そうであろう?」
なに言ってるんだろう...今は令和なのに。
「あのよく分からないので、西暦で言ってもらえますか?」
「1853年のはずだが..」
今は2021年...1853年...1853…1853…?
ん?ん??
「え??今は2021年ですけど...」
「いや、嘉永6年、1853年のはずだ。」
どうも、嘘をついているようには見えない。
そう思うと、なんだか急に自信がなくなってきた…
今って、ほんとに2021年だよね??
不安になって、スマホを開いて検索エンジンに
「今年 西暦」といれて調べてみる...
やっぱり間違ってない。今は2021年だ。
一人混乱していると
「その四角い、色とりどりの物はなんだ?」
四角い、色とりどり…?
あっ、もしかして
「これのことですか?」
そういって、わたしはスマホを差し出す。
「なんだか奇妙な物体だな。なぜ光っておるのか?」
まさか、スマホを知らないなんてないよね....?
恐る恐る聞いてみる。
「あの、これスマホですけど知ってますよね?」
一応、これは確認だ。そう、確認だ。
「いや、見たこともない。」
「あっ、やっぱりスマホは知ってますよ....ね…え?ん???いまなんて??しらない??スマホを??」
「あぁ、そうだ。それはなんに使うのか?」
あまりの驚きに口がぽかーんと開いたままになる。
「おーい、大丈夫か??」
「ん、え?あっ、だい、じょう、ぶ、です。」
「それで、それはなんに使うものなんだ?見たこともない。」
「あの!その前に!あなたもしかして、この時代の人じゃなかったりしませんか?」
「ま、まさか、しかし、そういわれれば見慣れん建物ばかり..それに、皆がきいている服もおかしい。これはどういうことだ?」
「私も信じられないんですが、あなたは多分タイムスリップしてきたきたんですよ。1853年から2021年に。」
なんだか感覚が麻痺してきた。
自分でも何を言っているのかよく分からない。
「た、たいむすりっぷ?」
あっ、そうか、1853年にこんな言葉ないのか…
「えーっと、時空を越えて飛んできた?みたいな...」
「時空を越えて、飛ぶ??私は先の世にきてしまったのか?信じられない。」
だよねーと心のなかで思う。
現に私も信じられていない。頭が追いつかない...
「とにかく、私が町を案内するので、なにか心当たりのある建物とか道があったら言ってください。」
「分かった。頼む。」