月の光~時空を越えて~
1. 出会い
「はぁあ。やってらんないよ、こんなの。」
高校二年生、期末テストまであと2日。
適当に選択した日本史のせいで、テストは最悪。
漢字、漢字、漢字、漢字...
見慣れない漢字の羅列にめまいがする。
「徳川家、何代までいるのよ!」
同じ名字が大量発生。
頭はパニック...
「このままじゃ私赤点...だ...」
日本史の教科書を開いて、もう2時間も経っている。にもかかわらず、最初のページから全く動けない。
そりゃそうだ。日本史の授業は、いつも居眠りして終わってた。もちろんノートも真っ白。
「もう無理、よしっ、やめよ。」
今から勉強しても遅いことを悟った私は、大きなあくびをする。
「あぁあ。」
季節は夏。いや、一応秋なのか?9月って。
扇風機を回してはいるものの、首筋にはじっとりと汗が滲む。
高校生になって独り暮らしを始めた私は学校近くの古いアパートを借りて暮らしている。
最初は猛反対された独り暮らしだったが、
あるゆる手を使って説得した結果、
「家賃をちゃんと払えるなら。」と許してくれた。
だから、エアコンも付いていない、このアパートで暮らし始めた。が、日中ひどいときには35℃にもなるこの場所で扇風機だけはきつすぎる。
居ても立ってもいられなくなって、部屋の窓のカーテンをあける。
鍵を開けて、窓を開けると
「あっつ!」
ぶわぁっと熱気が襲う。
「なんでこの窓南向きなのよ!」
もう耐えられなくなった私は、数百円しか入っていない財布をもって外に出た。
直射日光のせいで、肌が焼けるように暑い。
近くに涼めるような場所は...
「あっ、そうだ。古本屋。あそこならクーラーも効いてるし。」
重い足を動かして、近くの古本屋へ向かう。
小さい頃から通っていたが、最近は忙しくて行けていなかった。
風鈴の音がする。
「チリン、リリン。」
懐かしい...
古本屋なのに、なぜか暖簾があるこの店には他と少し違う雰囲気がある。
少し古くさいような、それでいて現代っぽいような..
暑さも忘れて、暖簾の前でぼーっとしていると
古本屋のおじいさんが声をかけてきた。
「あら、あんたみたことある顔だね。あ、そうだ綺桜ちゃんじゃないか。そうだろ?」
「おじさん、覚えてたの?」
「そりぁそうだよ。小学生の頃よく来てたじゃないか。」
小柄で上品な雰囲気のおじちゃんは、優しい笑みを浮かべた。
「まぁまぁ、綺桜ちゃん入りなさい。暑いだろう?」
おじさん、ありがとう と言うと、おじちゃんが暖簾をめくって、こっちこっちと手招きをする。
本を読みながら、かなり年季の入ったソファでくつろいでいると、おじちゃんが冷えた麦茶とお煎餅を持ってきてくれた。
「それにしても見ない間に大きくなったねぇ。」
確かに。ここに来るの何年ぶりだろう...
しかも、べっぴんさんになって とおじいさんが笑う。
懐かしいなぁ。おじちゃんはあの頃から全く変わっていない。
優しげな瞳と、紺色のエプロン...
心が癒されるような、ほっと温まるような、そんな気持ちになった。
「じゃあ、おじちゃん、帰るねー。」
おじちゃんが店の前まで送り出してくれる。
「またいつでもいらっしゃい、綺桜ちゃん。」
目を細めて微笑むおじちゃん。
「チリン、リリン」
空はもうオレンジ色に染まっている。
しかし日が暮れても、まだまだ蒸し暑い...
「うぅ、暑い。」
ぐーんと背伸びをして、家に帰ろうと歩き出したそのとき、
「ん?」
古本屋のベンチに誰かが倒れている。
「えっ、ちょっと。大丈夫ですか??」
肩を揺すると、倒れていた男性が顔をしかめながら目を開く...そしてがばっと勢いよく起き上がる。
「ここは...どこだ?私は一体何をしておる。」
なにこの話し方...笑ってはいけないと思いながらも、侍のような話し方に思わず吹き出してしまった。
「ぶはぁ。あは、あはは。あっ、ごめんなさい、つい。」
と謝ったものの、男性はこちらをじーっと険しい表情で見つめている...
見つめられたまま、沈黙は3秒..10秒...と続いていく。
なんでこんなに見てるのよ。
「えーっと、あの何か顔についてます?」
「お主。なぜそのような格好をしておるのか?
それは肌着ではないか?」
肌着?なに言ってるの...?
今は夏だしみんなこんな格好じゃん
と不思議に思っていると
「もしや、着る服がないのか?しかしそれにしては痩せておらぬな。」
「ななな、なによ!失礼な。」
デリカシーなさすぎでしょ。
初対面の人に向かって言う言葉じゃない!
「すまぬ。不快にさせてしまったなら謝る。」
あまりにも素直に謝ってくるので、なんだかこっちが悪者気分だ。
「別にいいですけど。あなたこそなんでそんな格好を?コスプレかなんかですか?」
少し長めの髪はきちんと結ばれて、時代劇に出てくるような格好をしている。
「コスプラ?聞いたことのない言葉だな。」
まさか、正気でこの格好してるの?
コスプレを知らないなんて...
「はぁあ。やってらんないよ、こんなの。」
高校二年生、期末テストまであと2日。
適当に選択した日本史のせいで、テストは最悪。
漢字、漢字、漢字、漢字...
見慣れない漢字の羅列にめまいがする。
「徳川家、何代までいるのよ!」
同じ名字が大量発生。
頭はパニック...
「このままじゃ私赤点...だ...」
日本史の教科書を開いて、もう2時間も経っている。にもかかわらず、最初のページから全く動けない。
そりゃそうだ。日本史の授業は、いつも居眠りして終わってた。もちろんノートも真っ白。
「もう無理、よしっ、やめよ。」
今から勉強しても遅いことを悟った私は、大きなあくびをする。
「あぁあ。」
季節は夏。いや、一応秋なのか?9月って。
扇風機を回してはいるものの、首筋にはじっとりと汗が滲む。
高校生になって独り暮らしを始めた私は学校近くの古いアパートを借りて暮らしている。
最初は猛反対された独り暮らしだったが、
あるゆる手を使って説得した結果、
「家賃をちゃんと払えるなら。」と許してくれた。
だから、エアコンも付いていない、このアパートで暮らし始めた。が、日中ひどいときには35℃にもなるこの場所で扇風機だけはきつすぎる。
居ても立ってもいられなくなって、部屋の窓のカーテンをあける。
鍵を開けて、窓を開けると
「あっつ!」
ぶわぁっと熱気が襲う。
「なんでこの窓南向きなのよ!」
もう耐えられなくなった私は、数百円しか入っていない財布をもって外に出た。
直射日光のせいで、肌が焼けるように暑い。
近くに涼めるような場所は...
「あっ、そうだ。古本屋。あそこならクーラーも効いてるし。」
重い足を動かして、近くの古本屋へ向かう。
小さい頃から通っていたが、最近は忙しくて行けていなかった。
風鈴の音がする。
「チリン、リリン。」
懐かしい...
古本屋なのに、なぜか暖簾があるこの店には他と少し違う雰囲気がある。
少し古くさいような、それでいて現代っぽいような..
暑さも忘れて、暖簾の前でぼーっとしていると
古本屋のおじいさんが声をかけてきた。
「あら、あんたみたことある顔だね。あ、そうだ綺桜ちゃんじゃないか。そうだろ?」
「おじさん、覚えてたの?」
「そりぁそうだよ。小学生の頃よく来てたじゃないか。」
小柄で上品な雰囲気のおじちゃんは、優しい笑みを浮かべた。
「まぁまぁ、綺桜ちゃん入りなさい。暑いだろう?」
おじさん、ありがとう と言うと、おじちゃんが暖簾をめくって、こっちこっちと手招きをする。
本を読みながら、かなり年季の入ったソファでくつろいでいると、おじちゃんが冷えた麦茶とお煎餅を持ってきてくれた。
「それにしても見ない間に大きくなったねぇ。」
確かに。ここに来るの何年ぶりだろう...
しかも、べっぴんさんになって とおじいさんが笑う。
懐かしいなぁ。おじちゃんはあの頃から全く変わっていない。
優しげな瞳と、紺色のエプロン...
心が癒されるような、ほっと温まるような、そんな気持ちになった。
「じゃあ、おじちゃん、帰るねー。」
おじちゃんが店の前まで送り出してくれる。
「またいつでもいらっしゃい、綺桜ちゃん。」
目を細めて微笑むおじちゃん。
「チリン、リリン」
空はもうオレンジ色に染まっている。
しかし日が暮れても、まだまだ蒸し暑い...
「うぅ、暑い。」
ぐーんと背伸びをして、家に帰ろうと歩き出したそのとき、
「ん?」
古本屋のベンチに誰かが倒れている。
「えっ、ちょっと。大丈夫ですか??」
肩を揺すると、倒れていた男性が顔をしかめながら目を開く...そしてがばっと勢いよく起き上がる。
「ここは...どこだ?私は一体何をしておる。」
なにこの話し方...笑ってはいけないと思いながらも、侍のような話し方に思わず吹き出してしまった。
「ぶはぁ。あは、あはは。あっ、ごめんなさい、つい。」
と謝ったものの、男性はこちらをじーっと険しい表情で見つめている...
見つめられたまま、沈黙は3秒..10秒...と続いていく。
なんでこんなに見てるのよ。
「えーっと、あの何か顔についてます?」
「お主。なぜそのような格好をしておるのか?
それは肌着ではないか?」
肌着?なに言ってるの...?
今は夏だしみんなこんな格好じゃん
と不思議に思っていると
「もしや、着る服がないのか?しかしそれにしては痩せておらぬな。」
「ななな、なによ!失礼な。」
デリカシーなさすぎでしょ。
初対面の人に向かって言う言葉じゃない!
「すまぬ。不快にさせてしまったなら謝る。」
あまりにも素直に謝ってくるので、なんだかこっちが悪者気分だ。
「別にいいですけど。あなたこそなんでそんな格好を?コスプレかなんかですか?」
少し長めの髪はきちんと結ばれて、時代劇に出てくるような格好をしている。
「コスプラ?聞いたことのない言葉だな。」
まさか、正気でこの格好してるの?
コスプレを知らないなんて...