不思議な図書館の魔法~僕らは物書き~
「優花、悪いけど……俺が説明をする間だけ、1人で幻影と戦ってほしいんだ」

玲の言葉に優花は「分かった!」と笑うと、物陰から現れた幻影に向かって走っていく。

「……物書きは、『文章を具現化する力』を持ってるんだ……静弥が文を言った時、静弥の前に盾が現れたでしょ?あの力が、文章を具現化する力だよ。俺……あまり説明するのは得意じゃないし、難しいから、実際に戦ってもらった方が良いかもしれない……」

そう言って、玲は幻影に目を移した。そして、もう一度僕に目を移す。

……力を借りてる本って、僕がさっきまで読んでた本かな……?

「それから……この筆は『魔法筆』と呼ばれてる。この筆が武器に変わってたり、他の魔法を発動してる時は使えないよ……文章を具現化する力によって発動される効果を、物書きは『魔法』と呼んでるんだ」

それだけ言うと、玲は走り出した。

「……」

僕は、幻影と戦う玲と優花を見つめる。

……皆に忘れ去られた本が幻影になる……か。もし、本にも心があったとして……相当苦しかったんだろうな……。

ふぅ、と息を吐いて、僕は魔法筆を握り締めた。

幻影って……忘れ去られた本の主人公の心を現してるみたい……心なしか苦しそう……。
< 7 / 33 >

この作品をシェア

pagetop