悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
曰く、自分たちは山の中に住む竜の一家で、生まれて三十年ほどが経った双子の竜たちの親だ、とのこと。
この双子竜、とにかく最近は元気盛りのいたずら盛り。人里に飛んで行っては炎を吐いたり(かるく嫌がらせだよね)、人を驚かせてみたり(だからそれ魔法警備隊飛んでくる案件だからね)。
そんな風に双子竜はその日も夜陰に紛れて人の街の上空を飛んでいて、口から炎を出して遊んでいたそうだ(うっわ。めっちゃ迷惑)。
そして夜陰に紛れてひた走る馬車の近くにうっかり炎を吐いたそうで(たち悪いな)、馬車は立ち往生。馬車に乗っていた人間たちが半狂乱になる中、地上に降り立った双子竜は荷物の中から人間の少女を発券したそうだ。
ちなみに馬車に乗っていたそのほかの人間たちは方々に逃げていったそうで(え、わたし置いていくなんて……ちょっと傷つく)、双子竜はわたしを持ち帰ったそうだ。
「そこは普通に置いてきてほしかったです」
「そうねえ。わたくしも今すぐに戻してきなさいって言おうと思ったのだけれど」
あ、やっぱり。普通そうなるよね。子供が犬猫拾ってきたら、母親はとりあえず戻してきなさいって言うよね。
「ああ、自己紹介がまだだったわね。わたくしはレィファルメア。こっちが夫のミゼルカイデンと」
「僕はフェイルリックだよ」
「わたしはファーナメリア」
はいはーい、と双子が声を出す。
にしても自己紹介唐突だ。
「わたしはリーゼロッテと言います」
一人だけ名乗らないのもおかしいのでわたしも名乗ることにした。家名を出さなかったのは一応用心のため。
「あなた、リーゼロッテは竜の大きな声やら魔法の波動にも動じないで、というか眠りこけているし。あらあら、どうしたのかしらと調べてみたら毒で昏睡状態に陥っていていたでしょう。わたくし、驚いてしまって」
「そ、それは」
自ら仮死状態になる薬を飲んでいたので当たり前といえば当たり前。
妻の言葉を引き取るように今度はミゼルカイデンが口を開く。
「それにね、結構きわどい状態だったんだよ。生と死の狭間にいるというか、心臓の動きも泊まる寸前。魔法由来の薬じゃなかったから毒抜きも簡単ではなかったし。あのまま何も手を施さなかったらきみは死んでいた。いや、きっときみの従者たちはきみがまだかろうじて生きていたことを知らずに埋葬をする手筈になっていたのだろう?」
この双子竜、とにかく最近は元気盛りのいたずら盛り。人里に飛んで行っては炎を吐いたり(かるく嫌がらせだよね)、人を驚かせてみたり(だからそれ魔法警備隊飛んでくる案件だからね)。
そんな風に双子竜はその日も夜陰に紛れて人の街の上空を飛んでいて、口から炎を出して遊んでいたそうだ(うっわ。めっちゃ迷惑)。
そして夜陰に紛れてひた走る馬車の近くにうっかり炎を吐いたそうで(たち悪いな)、馬車は立ち往生。馬車に乗っていた人間たちが半狂乱になる中、地上に降り立った双子竜は荷物の中から人間の少女を発券したそうだ。
ちなみに馬車に乗っていたそのほかの人間たちは方々に逃げていったそうで(え、わたし置いていくなんて……ちょっと傷つく)、双子竜はわたしを持ち帰ったそうだ。
「そこは普通に置いてきてほしかったです」
「そうねえ。わたくしも今すぐに戻してきなさいって言おうと思ったのだけれど」
あ、やっぱり。普通そうなるよね。子供が犬猫拾ってきたら、母親はとりあえず戻してきなさいって言うよね。
「ああ、自己紹介がまだだったわね。わたくしはレィファルメア。こっちが夫のミゼルカイデンと」
「僕はフェイルリックだよ」
「わたしはファーナメリア」
はいはーい、と双子が声を出す。
にしても自己紹介唐突だ。
「わたしはリーゼロッテと言います」
一人だけ名乗らないのもおかしいのでわたしも名乗ることにした。家名を出さなかったのは一応用心のため。
「あなた、リーゼロッテは竜の大きな声やら魔法の波動にも動じないで、というか眠りこけているし。あらあら、どうしたのかしらと調べてみたら毒で昏睡状態に陥っていていたでしょう。わたくし、驚いてしまって」
「そ、それは」
自ら仮死状態になる薬を飲んでいたので当たり前といえば当たり前。
妻の言葉を引き取るように今度はミゼルカイデンが口を開く。
「それにね、結構きわどい状態だったんだよ。生と死の狭間にいるというか、心臓の動きも泊まる寸前。魔法由来の薬じゃなかったから毒抜きも簡単ではなかったし。あのまま何も手を施さなかったらきみは死んでいた。いや、きっときみの従者たちはきみがまだかろうじて生きていたことを知らずに埋葬をする手筈になっていたのだろう?」