悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「この期に及んで嘘をつくな! 貴様は私の心がフローラに向かうのを良しとしなかった。内心悔しかったのだろう。公爵令嬢として周囲の人間から傅かれ、ちやほやされることに慣れきっていた、高慢な女だからだ。貴様は私の知らないところでフローラを害した。心優しい彼女は、自分からことを荒げることはしなかった。貴様と違ってフローラは謙虚で慈悲深く、優しく、公平だ。貴様とはまるで違う」
ヴァイオレンツはそれが世界の常識だというように、わたしを罵りフローレンスを褒めたたえた。
彼の中ではそうなのだろう。ゲームの時と同じ調子で彼はフローレンスのことを讃えた。
「わたくしは、確かにヴァイオレンツ様が初恋でした」
わたしは静かに言った。
まだ、わたしが転生者だと自覚する前。小さかったわたしは周囲の人間から蝶よ花よと大切に育てられ、そしてヴァイオレンツに対面した。金髪碧眼の、ザ王子様の容姿をした彼に一目ぼれをしたのはたしかにわたし。
けれど。
わたしだっていつまでも夢見る女の子じゃない。
「けれど、それはそれ。わたくし自分のことを嫌いだと態度で表す男性をずっと想っていられるほどおめでたくはありません。それでも一応わたくしは殿下の婚約者でしたから、王家と我がベルヘウム家の関係を慮ってそれっぽく振舞っていただけです。婚約破棄など、折を見てこちらから言い出したかったくらいですわ」
わたしは鼻で笑ってやった。
なんかもうムカついたから。
結局この男はわたしのことが最後まで気に食わなくて、フローレンスのことを溺愛する運命にあるのだ。よくもまああんなぶりっ子の本性に気が付かずにいまだにフローラとか言っていられるよね。ばっかじゃないの。
「な、貴様……王太子に向かってなんていう暴言」
「わたくしから嫌われていてよかったのではありませんか。何をそう怒るのです?」
さすがに面と向かって拒絶されるとは思っていなかったのかヴァイオレンツはわたしの言葉に衝撃を受けている。ずっと好かれていると思っていた相手から、こちらこそ婚約破棄したかったですとか言われたらびっくりもするよね。
「っ……」
彼は二の句を告げなくなる。
とりあえず、わたしは言いたいことを言えて満足した。
白亜の塔送りだとしても、最後までヴァイオレンツのことを好きなままだと思われているのは癪にさわったし。
ヴァイオレンツはそれが世界の常識だというように、わたしを罵りフローレンスを褒めたたえた。
彼の中ではそうなのだろう。ゲームの時と同じ調子で彼はフローレンスのことを讃えた。
「わたくしは、確かにヴァイオレンツ様が初恋でした」
わたしは静かに言った。
まだ、わたしが転生者だと自覚する前。小さかったわたしは周囲の人間から蝶よ花よと大切に育てられ、そしてヴァイオレンツに対面した。金髪碧眼の、ザ王子様の容姿をした彼に一目ぼれをしたのはたしかにわたし。
けれど。
わたしだっていつまでも夢見る女の子じゃない。
「けれど、それはそれ。わたくし自分のことを嫌いだと態度で表す男性をずっと想っていられるほどおめでたくはありません。それでも一応わたくしは殿下の婚約者でしたから、王家と我がベルヘウム家の関係を慮ってそれっぽく振舞っていただけです。婚約破棄など、折を見てこちらから言い出したかったくらいですわ」
わたしは鼻で笑ってやった。
なんかもうムカついたから。
結局この男はわたしのことが最後まで気に食わなくて、フローレンスのことを溺愛する運命にあるのだ。よくもまああんなぶりっ子の本性に気が付かずにいまだにフローラとか言っていられるよね。ばっかじゃないの。
「な、貴様……王太子に向かってなんていう暴言」
「わたくしから嫌われていてよかったのではありませんか。何をそう怒るのです?」
さすがに面と向かって拒絶されるとは思っていなかったのかヴァイオレンツはわたしの言葉に衝撃を受けている。ずっと好かれていると思っていた相手から、こちらこそ婚約破棄したかったですとか言われたらびっくりもするよね。
「っ……」
彼は二の句を告げなくなる。
とりあえず、わたしは言いたいことを言えて満足した。
白亜の塔送りだとしても、最後までヴァイオレンツのことを好きなままだと思われているのは癪にさわったし。