悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 横から子供の声が聞こえる。さっきも聞いた少し舌ったらずな甘え口調の声。

「わたし? わたしは……って。あなたたち誰?」

 わたしにまとわりついてくる子供たち。

 改めて横を向くと、そこには天使のように愛らしいふっくらした頬を持った金髪の髪をした男の子と女の子。瞳も髪の毛と同じく金色をしていて、瞳孔が縦に長い。

 年の頃は、うーん……。七、八歳ってところかな。

 健康そうな頬はマシュマロみたいに柔らかそうで、ふたりとも整った顔立ちをしている。二人ともくせっ毛で、一人は鎖骨の辺りまでの長さ。もう一人は顎の下あたりまで。二人そっくりな顔をしているが、おそらくは男女の双子……ちゃん? 一応一人はずぼんを履いているから。

 わたしは二人をじぃっと見つめた。
 にしても洞窟に置かれたわたしと正体不明の愛らしい子供二人。

 えっと……。どういう状況?

「ねえねえ。なんて名前なの?」
「わたしたちずぅぅぅっとおねーちゃんが起きるのを待っていたんだよ」

「もうずっと寝ていたもんね」
「うん。枝でつついても起きなかったね」

「ドルムントがやめなさいって言っていたね」
「うんうん。人間は枝でつつくものではありませんって」

「指ならいいのかな?」
「指ならいいんだよ」

「おねーちゃん、変な薬に当たったの?」
「お父様がそう言っていたよ」

「食あたり?」
「違うよ。げきやくを飲まされたんだよ」

 子供たちは二人で会話を続けていく。
 途中聞き捨てならないことを言われた気がしたが、起きたばかりで頭が回らない。目の前の状況把握だけで精いっぱいだ。

 たしかにわたしは薬を煽った。死んだふりをしてバッドエンドから逃げるために。仮死状態になったわたしは棺桶に入れられて公爵家の埋葬地へ運ばれる予定だった。というのは建前で、あらかじめ買収しておいた公爵家の家人によってこっそりと国境近くの村まで荷物にくるまれて運ばれる手はずになっていたはず。

 なのにどうしてこうなった?
 というか、この子たち。

 わたしは目を見張った。女の子のスカートから尻尾のようなものが飛び出ている。猫とか犬のしっぽではない、爬虫類系のしっぽだ。

「……」

 女の子の感情に連動しているのか、時折左右に揺れている。
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