最悪な恋の落ち方
「おい、この人意識がないぞ!!」

誰かの声に、草介は慌てて体を動かす。横断歩道の真ん中で、一人のスーツを着た男性が仰向けで倒れていた。その目や耳からは出血がある。

草介は辺りを見回す。ここは交通量の多い交差点だ。この人をこのまま放置すればこの人が危険に晒されてしまう。

「とにかく、この人を安全なところまで運びましょう。手伝ってください」

草介は、目の前にいる作業服を着た男性に声をかける。男性は「わかりました」と返事をし、草介と男性は倒れている男性に触れようとした。刹那、草介の手が何者かによって掴まれる。

「手を出すな。あんたら、殺人犯になるぞ」

草介の手を掴んだのは、白いトレーナーの上にデニムジャケットを羽織った黒いスキニーパンツ姿の高身長の女性だった。その顔立ちはとても美しく、草介はドキッとしてしまう。

「おい、あんた。この人を動かしちゃダメだって言うのかよ。この人、このまま放置したら危険だろうが」
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