最悪な恋の落ち方
突然の指示に草介は戸惑う。しかし、明日菜に「早くしろ!」と怒鳴られ、慌てて電話をかけ始めた。スマホを持つ手が震えている。
草介が救急車を呼んでいる間にも、明日菜は他の人に指示を出し、AEDを持って来させたり、怪我人の止血をしたりしていた。その間、脳挫傷を起こした男性は放置されている。
「あの、この人は処置しないんですか?」
止血をしている明日菜に草介が訊ねると、「ああ」とすぐに返事が返ってくる。その声はやはり淡々としていた。
「医者は医療器具があって初めて処置ができる。医療器具がないこの場所でできることは限られている。脳挫傷を起こした人が助かる確率は低い。このような状況では、確実に助かる命を救うのが賢明だ」
残酷なことを平気で口にする明日菜に対し、草介は「やっぱり医者は冷たい」と呟く。その呟きに明日菜は顔を上げた。目と目が合い、草介は息をのんだ。
「お前、職業は?」
明日菜に訊ねられ、「薬剤師です」と草介は緊張しながら答えた。明日菜の鋭い視線に嘘はつけない、そう思ったからだ。
草介が救急車を呼んでいる間にも、明日菜は他の人に指示を出し、AEDを持って来させたり、怪我人の止血をしたりしていた。その間、脳挫傷を起こした男性は放置されている。
「あの、この人は処置しないんですか?」
止血をしている明日菜に草介が訊ねると、「ああ」とすぐに返事が返ってくる。その声はやはり淡々としていた。
「医者は医療器具があって初めて処置ができる。医療器具がないこの場所でできることは限られている。脳挫傷を起こした人が助かる確率は低い。このような状況では、確実に助かる命を救うのが賢明だ」
残酷なことを平気で口にする明日菜に対し、草介は「やっぱり医者は冷たい」と呟く。その呟きに明日菜は顔を上げた。目と目が合い、草介は息をのんだ。
「お前、職業は?」
明日菜に訊ねられ、「薬剤師です」と草介は緊張しながら答えた。明日菜の鋭い視線に嘘はつけない、そう思ったからだ。