最悪な恋の落ち方
「病院じゃなくてドラッグストア勤務というところか?」

明日菜の言葉に草介は「どうしてわかったんですか?」と驚く。シャーロック・ホームズがワトソン先生の職業を一発で当てたように、明日菜は草介のことを当てた。驚きで草介はポカンとしてしまう。

「簡単だ。病院勤務の薬剤師なら、医者と接することもあるからそんなことは口にしない。医者にだってできることが限られていると知っているからな!」

何も知らない馬鹿、と遠回しに言われたような気がして草介は傷付いてしまう。しかし、明日菜は「何をボサッとしてるんだ。さっさとお前も動け」と指示を出す。医療の世界に落ち込んでいる暇などないのだと、草介は無理にでも理解させられた。

「俺、医者じゃないんですけど……」

草介がそう言うと、明日菜に手を掴まれる。まっすぐな目で見つめられ、草介は目を逸らせなくなってしまった。交通事故によって騒めく声が一瞬にして消えてしまう。
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