最悪な恋の落ち方
しかし、女性は草介の言葉に反応することはない。両目は閉じられており、意識がないことがわかる。しかし、胸が上下に動いているため、呼吸はある。

「息をしているし、大丈夫かな……?」

草介はそう一瞬判断した。しかし、怪我人の様子を見て回る明日菜の姿を見て、勝手な判断はしてはいけないのではと思った。病気や怪我のことは薬剤師である自分の専門外だ。

「あの、この人はただ気を失っているだけですか?」

明日菜に草介は声をかけ、女性の元へと連れて行く。すると、明日菜の表情が一瞬にして変わった。

「まずい、これは死戦期呼吸だ!早くAEDを!あんたたち、ちょっと来てくれ!」

明日菜が言い、草介は慌ててAEDを手にして走る。死戦期呼吸とは、突然の心停止をしてから数分のうちに起こる死の直前の喘ぎ呼吸だ。普通の呼吸とパッと見ただけでは変わらないため、素人が判断するのは難しい。

草介がAEDを持っていくと、女性の周りには大勢の人が集まっており、明日菜が心肺蘇生を行なっている最中だった。
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