僕らのお嬢
「ところで、話は変わるがお嬢、今日は数学の小テストだぞ」
「だから何だ?」

向こうで着替えるお嬢にソウタは声をかけると、服のこすれる音と共にお嬢の声が聞こえる。

「大丈夫なのか?数学は苦手だろう。あまり良くない点数を取るとランクが落ちるぞ」
「私を誰だと思ってる」

シャッとカーテンが開くと制服を着たお嬢が腕を組んで立っていた。


「伊集院家の跡取り娘、伊集院澄子だぞ」

お嬢は切れ長の目を細め、凛とした表情で俺達に言う。その姿は立てば芍薬と言うか薔薇と言うか、どんな華にも負けないくらい綺麗だ。しかし・・・

「あのな、お嬢。かっこよく決めてるところ悪いんだけど、寝ぐせ立ってるぞ」
「・・・・!?」

どんなに凛としても、てっぺんの髪が変な方向にハネていては台なしである。
お嬢はオレの言葉にハッとしたように、急いで手櫛で髪をとかす。

「そんなんじゃ直りませんよ・・・・。レディなら寝ぐせくらいしっかり自分で直してください」
ショウゴは呆れた顔でお嬢の髪をせっせと櫛でとかす。

「む・・・。ショウゴ、今日の予定は?」
「はい。今日は学校が終わった後、ヴァイオリンの稽古が入っています」
「分かった。ソウタ、今日の気温は?」
「二十度だ。ちなみに天気は快晴、温かいぞ」

そう言いながら、ソウタはお嬢の胸元に校章である赤いバラを付ける。

「セイヤ、今日の朝食は?」
「えっとねぇ、サンドウィッチ!!野菜たくさん入れるように頼んだんだよ☆あと、珈琲もちゃんと甘めにしたよ!!」

お嬢よりも背の小さいセイヤはまるで子供のように話す。
そんな姿にお嬢は目を細めて微笑むと、セイヤの頭を撫で「ありがとう」と一言言う。

「あ、お嬢。ピアス忘れてるぜ」

オレは自分のポケットから小さな箱を取り出し、小さな小粒のピアスを取り出す。ダイヤとサファイアのピアスがきらりと手の中で輝く。

「これ忘れたらまた生徒会に叱られるぜ?」
「それだけは勘弁だ・・・」

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