君と私で、恋になるまで
……お、
「押してしまった、」
ぴょこっとトーク画面へ表示されるメッセージに、私はその場でスマホを投げ飛ばして走り出したくなる衝動に襲われる。
どうしよう、どうしよう…!
心臓がてんやわんやのお祭り騒ぎになる中、恐る恐るスマホを覗くと先程送ったばかりのメッセージに既読が付いていた。
「!?」
速くない…!?
飲み会に集中しなよと送ったのは自分のくせにそんな風に思えば、今度はスマホが震えた。
「……え、」
【着信: 瀬尾 央】の表示に驚いた私は、その拍子に持っていたスマホを一瞬宙へ浮かせた。
挙動不審が甚だしくて、絶対周りの人に引かれている。
1つ、深い呼吸をしてスマホを耳にあてる。
「……も、もしもし。」
"…残業というか、古淵の世話お疲れ。"
鼓膜を揺らすのは、いつものロートーンボイス。
若干トゲのある言い方をする瀬尾の言葉を自分の中で咀嚼し終えたら苦笑いが漏れた。
恐らく、古淵から私が手伝ったことも聞いたのだろう。
「…今日はまあ、不慮の事故だから。」
"ギリギリにやるのが悪い。あいつ絶対夏休みの最終日泣くタイプ。"
それはまあ、間違い無いとは思う。
"…今どこ?"
「…あ、丁度会社出たところ。」
"……そこに居て。"
「…え?」