君と私で、恋になるまで
なんで?そう尋ねる前に、ツーツーと、もう通話が切れた音がスマホからは聞こえていた。
どうしたのだろうとぼんやり立っていると
「____枡川。」
「…え、」
先程まで聞いていた声がより鮮明に背後から届いて私は勢いよく振り返る。
スラリと背の高い、だけど気怠げな男はそんな私を見てやっぱり少し笑っている。
「……の、飲み会どうしたんですか。」
「ビアガーデン終わって二次会の流れになったから抜けました。」
「な、なるほど……、理解しました。」
急に現れたこの男に、動揺を悟られないようにするのは凄く大変だ。
「…ごめんね、リーダーが途中抜けしてしまった。」
「うちのリーダーは、本当にアホみたいに真面目だからな。」
「アホみたいに…?」
この男の褒め方は、いつも何か惜しい。
というかもはや褒めてない気がする。
「営業は足使うって歩くの譲らないし、同期が困ってたらすっ飛んで戻るし。皇先輩のチームの人達にも枡川さんは常に勢いありますねって言われた。」
「……なんかすいません。」
皇先輩、というのは香月さんのことだ。
勢いがある。
それは本当に、その通りで返す言葉は無い。
やっぱり、私に保城さんのような可憐さを目指すのは厳しいなと苦笑した瞬間だった。