君と私で、恋になるまで




「まあでも、うちのリーダーはそれが良いところなので。あと面白くて飽きない。」


 "その部分なら、もっと頑張れるかな。

____あの男にも、認めてもらえるくらいに。"


これは、ちょっとは、
"その部分"である仕事の面は、認めてくれてるって思っても良いのかな。

というか面白いって何。ほんと、この男は余計なことを最後に添えてくれる。


心でそんな風に文句を言うくせに、何故だか目頭が熱くてしまって、それを隠すように


「……瀬尾は、なんでここにいるの?」

そう話題を変えて尋ねた。




「2人に差し入れしようかなと思って。」

2人、とはきっと古淵と私のことだ。

平然と伝えられた言葉に思わず笑うと、その理由が読み取れなかったのか男は目を丸くしている。



「…瀬尾ってさ。」

「うん?」

「同期のこと好きだよね。」

「……はあ?」

「だってわざわざ会社まで戻ってくる?
古淵のこともよく文句は言ってるけど、実はすごい好きでしょ?」


そう伝えれば、目を細めながらも否定はしてこない。凄く、不服そうではあるけど。

仲良いもんなあ、そう思うとやはり笑ってしまう。


「…枡川もだろ。」

「え?」

「同期のこと、好きじゃないの?」

「…す、好きだけど。」

毒舌ながら、なんだかんだいつも応援してくれる亜子のことも、変な日本語使う人懐っこい古淵のことも、他のみんなのことも勿論、大切だ。



「じゃあ引き分けじゃん。」

「なんの勝ち負けなの。」


だけど。

気怠げで、いつものらりくらり、掴めない発言で簡単に私を翻弄してくるこの男への"好き"は、とっくに他とは違う。

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