君と私で、恋になるまで
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「……おい。なんなの、このTシャツ。」
「何って、展示会用のうちのオリジナルTシャツだよ。
あ、サイズ違った?」
「…サイズの話じゃ無いわ。センスどうした?」
「とにかく目立てば勝ち、がコンセプトだから。」
「その話し合いに参加しなかったことを強く後悔してる。」
「瀬尾、それ着終わったら段取り説明しちゃうね。」
「聞けや。」
目の前で、顔を最大限に歪めながらそんな風に伝えてくる奴の言葉を流して、私は積まれた段ボールの上段から大量のチラシをバサリと取り出す。
___この、夏真っ盛りの今日。
私達は「新しい働き方」をテーマにした大規模な展示会に参加している。
ライブなどにも使われるような、広大無辺な展示場を貸し切って行われるそれは、あらゆる会社が出展に名乗りをあげて、ブースを作るものだ。
それ自体は、なんだか就活時代によく案内が来ていたエキスポを思い出させる仕組みだな、と思う。
だだっ広い、天井の高い大きな空間には、沢山の人がせかせかともう直ぐ始まるイベントに向けて最終の準備に取り掛かっていた。
多種多様の企業が自社の製品やサービスを「新しい働き方」に当てはめて宣伝するための展示会。
そんな中で私達は、オフィス家具そのものや、それを活かした空間づくりを用意されたブースで提案し、来場したお客様にアプローチしていく。
だから、どんどん目立って、パイプを広げることがとにかく重要なわけで。
「蛍光イエローのTシャツ着てる集団、大丈夫なわけ?」
先ほどから、それはもう苦虫を潰した顔で私に文句を告げてくる瀬尾は、黙らせるしか無い。