君と私で、恋になるまで
「もーー、文句ばっかり言ってないでさ、」
そう言いながら振り返ると、そこにはいつの間に着替えたのか、蛍光イエローのTシャツに身を包んだ瀬尾が気怠げに立っていた。
そのTシャツのど真ん中には、でかでかと筆文字フォントで
『オフィスを劇的に変えるべし!!!!』
と勢いよく書かれていた。絶妙にダサい。
「……瀬尾。」
「なに。」
「…Tシャツ、似合うね。」
「喧嘩売ってんの?」
そのまま舌打ちまでしそうなくらい不機嫌な男を前に私は思わず吹き出してしまった。
だけど、似合うね、は嘘では無い。
結局どんな変な服着てても、私の目は何かのフィルターでもかかってるのかなと思うくらい、この男は輝いて見えるから、もう重症だしお手上げという感じだ。
はあ、と1つ溜息を吐いた瀬尾は、ロートーンボイスを保ったまま私を見やる。
「…これ、誰が提案したの?」
「え?古淵。」
「なんでこういうとこで俺達デザイナーを使わないかな。」
「忙しいデザイナーさん達にそんな時間無いでしょ。とにかく、今日は目立てば大丈夫だから!」
「…まあ、枡川は似合ってるから良いよね。」
「仕返しの褒め言葉ありがとう。」
私の返答に、諦めたようにクスリと笑って、「で、何手伝えば良いの?」と優しく尋ねる男に私も微笑む。