君と私で、恋になるまで
「また近々、同期会しような。」
屈託の無い笑顔で古淵が投げてきた提案に、微笑んで頷く。
あの男と同期で良かったって、何度も思ってきた。
だけど時々、この関係性への甘えが、私を動けなくすることもある。
それじゃ駄目だって、もう充分、分かっているのに。
「私、ちょっと瀬尾探しに行ってくる。」
「こんだけ人いたら探すのも一苦労するな。
あ、でも今日のこのTシャツは最高に目印になるな〜」
「…そうだね。」
___例えば、このへんてこな蛍光イエローのTシャツを着ていなかったとしても。
私は、沢山の人がごった返すこの空間の中でも、きっと簡単にあの男を見つけられると思う。
そんな言える筈のない自分の思いは仕舞い込んで、古淵に同調した瞬間だった。
「_____ちひろ。」
ふいに耳に入り込んだその声に、聞き覚えがあった。
ゆっくりと振り返った先の、パキッとしたスーツ姿の人影。
あの頃より短めの黒髪で、爽やかな雰囲気を纏うその人物の名前は、考えるより先に滑り落ちた。
「…い、つき?」
「久しぶり。」
そう言って白い歯を見せる彼に、私は開いた口もそのままに、立ち尽くすことしかできなかった。