君と私で、恋になるまで
あの日以来、実は瀬尾とは会えていない。
午前中から直行で現場だった私は、そのまま外ランチに亜子と出ていていたので午後からオフィスに戻るのも少し緊張している。
あの男と、どんな顔で対面すれば良いんだろう。
「…で、どうやって瀬尾と話すの?」
「やっぱり夜に、いつもの居酒屋に誘うしかないかなあ。」
「ああ、あの色気無いところね。」
「……めっちゃ美味しいけどね!」
はいはい、と流す亜子と共にフロアへ向かう通路を歩いていた時だった。
「お!!2人とも良いところにいた!」
元気な声でそう私達の目の前から駆けてきたのは、同期の中で1番毎日元気な古淵だ。
「何。」
「今日、同期会するから!」
「え、今日…?」
「なんでわざわざ月曜にやんのよ。アホなの。」
げんなり呟いてスタスタと歩いていく亜子を古淵が追いかける。
まるで飼い主を見つけた従順な犬のようだ。
「良いじゃん〜〜だって金曜とかに設定しても結局島谷来ないじゃん。」
「忙しいのよ私は。しかも今日はちひろも予定入ってるから。ね?」
「え。あー、うん…?」
おそらくこの強引な確認は、先ほどの瀬尾を飲みに誘うという流れからだろう。
「そうなん!?えーー折角もう瀬尾も捕まえたのに!!」
「………今日ね、了解。
場所はどこ?ちひろも予定あるならリスケしてね。」
「あ、はい。」
急な方向転換で今日の出席を決めた亜子は不自然すぎるが、ガッツポーズで喜んでる古淵にはもはやそんな事は関係ないらしい。
「…良い?1次会でちゃんとあのクソ男と抜けんのよ?」
「(クソ男…)し、精進します。」