君と私で、恋になるまで



___プルルルル


今度は、デスクに置かれた社用携帯がけたたましく着信を知らせる。



「はい、〇〇の枡川です。」

“あ、いつもお世話になっております。
□社の明野です。“



「はい、いつもお世話になっており…

___ん?」



“ちひろ。今、電話できる?“


告げられた名前の違和感に言葉を止めれば、少しだけ笑いを含んだ声が鼓膜を揺らした。





◽︎


「…え…、うちに…?」


“あの後も別の会社のブース見て、俺は仲介の立場として、△社の要望に1番沿っているのはちひろの会社だって思ったから。

あの日、一緒にいた人。
松奈《まつな》さんって言うんだけど、俺は、正直に自分の考えを伝えたよ。
多分、△社から正式に依頼が来ると思う。“

 


「……そっか。それは嬉しい、ありがとう。

でも、担当チームの編成どうしよう。」


あの日、会場で松奈さんは女性の営業担当は困る、そうはっきり伝えた。

オフィス移転なんて大きな案件は、きっと香月さんのところのプロジェクトと同じように営業部の数人と他の部も合わせて大きなチームを作るはず。


全員を男性で編成するなんて、とても出来ない。





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