君と私で、恋になるまで
◽︎


「え〜では、同期のかたい絆よ永遠に〜!」


古淵の謎の乾杯の音頭と共に、グラス同士が音を奏でる。

急遽の飲み会にしては、割と人が集まっていてこの人懐っこい古淵は、なんだかんだ人望があるなと生ビールで喉を潤しながら思う。



仕事後のビールって何でこんな美味しいんだろう。

お通しは安定の枝豆だ。


これは最高の月曜日じゃない?
そう思っていると、


「おい。何を呑気に飲んでんのよ。」

「……」

隣の亜子が、そう低い声で苦言を呈してきた。


「何、ここでも気を抜けないの!?」

1杯目のビールくらい美味しく飲むのも許されないのか。
眉を潜めてそう問い掛ければ、今度はニュアンスネイルに彩られた爪が可愛らしい細い指で私のおでこを小突いてきた。


「当たり前でしょ。
恋する女はいつも戦場と墓場を行ったり来たりすると思え。」

「…じ、地獄じゃん…」


古淵が予約してくれたのは、会社からもそう遠くは無いチェーンの居酒屋で、店内の2階にある広めの座敷を私たちで占領している形だ。


「見てみなさいよ。」

くい、と亜子の親指で促された視線の先には、隣のテーブルに座る瀬尾と、同期達。


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