君と私で、恋になるまで
あの日一樹が話しかけてきた時、そういえば古淵も近くにいたな、と記憶を辿る。
「…は、何?イケメンなの?」
亜子には、一樹と再会したことも軽く伝えていたが、「イケメンかどうかの情報は聞いて無かったんだけど」と睨んでくる彼女はそれはそれでややこしい。
絶対話が逸れるので置いておくことにして。
「大学時代の同級生でね。」
「仲良さそうだったもんなー!!
急にイケメンに連れて行かれるからびっくりした!!!」
「古淵、声でかいうるさいしんどい。」
居酒屋の賑わしさに負けないように言葉を届けようとすればそれなりに声のボリュームも上がる。
だけど、古淵の声は規格外にデカい。
今更勿論何も無いけど、わざわざ元彼の話を話題にしたくもないと思っていたので、亜子の苦言に内心感謝してしまった。
ブーブー言いつつもあっさり従う古淵は本当に亜子に従順だ。この2人は何なんだろう、とたまに思う。
一瞬で変に汗をかいた私は、一旦この熱気の篭る空間から出たいと、亜子にはお手洗いへ行くと告げて席を立った。