君と私で、恋になるまで




そういえば、今日はこの会が終わったら瀬尾とはどうやって合流するんだろう。

というか、いつもの居酒屋に行く、で良いのかな。


手を洗ってハンカチをジャケットのポッケから取り出しつつ、思った以上に何も決まっていないことに気付いて苦笑する。

話をするためにも、やはり私も瀬尾の近くへ座るべきだよね。



「…よし。」

そう意気込んで、トイレのドアを開ける。




「……枡川。」

「っ、」

いつものロートーンで届いた自分の名前に大袈裟に反応する。


「え、瀬尾、?」


お手洗いは1階しか無く、2階へ繋がる少し急な階段の近くで背中を預けるように立つ男に目を見開いてしまった。


その拍子にスイッチが入ったかのように煩くなる鼓動は、もうそういうプログラムとして私の中に組み込まれているみたいだ。



「どうしたの…?」

「ちょっと、外出られる?」

「え…、?」

どうしたの。

その質問に答えることは無いまま出口へ向かう背中は
何故だか少し冷たい雰囲気を纏って見えた。


不思議に思いながらも、慌てて我に返ってその後ろ姿を追った。


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