君と私で、恋になるまで
そこから、何分経ったのか。
「…瀬尾、」
ぽつりと、それはもう頼り無い声で自然とこぼした自分にまた、苦笑いを溢した。
亜子の言う通り、馬鹿だなあ、ほんと。
心の沈みの理由であるあの男は、そんな素振りは見せないままでもきっと仕事を頑張っているのかな、なんてこんな時さえ思い出してしまう。
息を吐けば、あまりに憂いと熱が篭る。
遠く遠くへ周りの騒がしい音たちを置いて、いよいよ意識を手放しそうになっていた瞬間、だった。
「________なに。」
ロートーンの声が耳にあっさりと侵入して、簡単に私を連れ戻す。
返事なんてある筈の無いそれに驚いて急に目を開くと眩しい日差しが容赦なく襲って来て、思わず再び瞑りそうになる。
だけど。
「……え…?」
座っている私の目の前で、しゃがみ込んで。
心なしか少し息が上がっていて、だけどそれでもいつもの気怠さはあって。
男は、奥二重の涼しい瞳で私を真っ直ぐに見ていた。