君と私で、恋になるまで

◻︎


「冷やした方が良いものは、冷蔵庫に入れたから。」

「ありがと。」


良い突っ込みをいただいた後すぐにベッドへと送還された私に、少し離れた場所から「冷蔵庫開けても良い?」と男が確認してから数分後。


そんな風に告げて私が寝ているベッドのすぐ近くにしゃがむ男は、じ、と形の良い瞳で私を見つめた。


「……な、なに?」

「冷蔵庫にビールと塩辛しか入ってなかったんだけど。この部屋は普段おっさんが住んでんの。」


しまった、冷蔵庫の中までは考えてなかった。


"作り置きとかもあんまり今週は出来てない。

身体もだけど。
今週は、心も、しんどかったから。"



私にとっては、今週月曜日のあの同期会でのことは辛かった。

だけどきっと。
瀬尾にとってはそんなに大きな出来事では無い。


「…おっさんで悪かったね、いつもあんなもんだよ。」


本心を隠して、そう軽い調子で告げると、




「……それ、嘘だろ。」

ポツリと、ロートーンの声が頼りなく空間に響く。

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