君と私で、恋になるまで
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「冷やした方が良いものは、冷蔵庫に入れたから。」
「ありがと。」
良い突っ込みをいただいた後すぐにベッドへと送還された私に、少し離れた場所から「冷蔵庫開けても良い?」と男が確認してから数分後。
そんな風に告げて私が寝ているベッドのすぐ近くにしゃがむ男は、じ、と形の良い瞳で私を見つめた。
「……な、なに?」
「冷蔵庫にビールと塩辛しか入ってなかったんだけど。この部屋は普段おっさんが住んでんの。」
しまった、冷蔵庫の中までは考えてなかった。
"作り置きとかもあんまり今週は出来てない。
身体もだけど。
今週は、心も、しんどかったから。"
私にとっては、今週月曜日のあの同期会でのことは辛かった。
だけどきっと。
瀬尾にとってはそんなに大きな出来事では無い。
「…おっさんで悪かったね、いつもあんなもんだよ。」
本心を隠して、そう軽い調子で告げると、
「……それ、嘘だろ。」
ポツリと、ロートーンの声が頼りなく空間に響く。