君と私で、恋になるまで
「おでこ、出して。」
「え……自分で貼るよ。」
「もう裏のフィルム剥がしてるから。早く。」
戻ってきたスラリと身長の高い気怠い男は、本当に時々強引で有無を言わせない。
渋々、前髪を左右に分けて押さえて、待つ姿勢を取れば、再びしゃがみ込む男の気配が近づいて緊張からか、熱のせいか、視界がチカチカした。
それに反してぼんやり重だるい頭は、再び眠気を誘ってきている。
整った涼しい顔がいつもの天井と一緒に見えたのを確認して「あれ、顔思ったより近い」と理解した瞬間、
____ちゅ、とおでこに柔らかい感触があった。
だけどそれはすぐに離されて。
「………え、?」
息を吐くのと同じくらいのボリュームの声が部屋に滑り落ちる。
そうして、事態を把握するより前に冷んやりとした感覚がおでこから頭全体に広がっていった。
私を近距離で見下ろす形の良い瞳の中の眼光にバクバクと心臓が鳴っている。
そうして視線も、そのまま再び手も絡ませた男は、
「……熱に浮かされたってことにして。」
と、艶やかに、だけど少し頼りなく笑って呟いた。
その言い訳が使えるのは、今日は私の筈なんだけど。