君と私で、恋になるまで
冷えピタ事件の後、激しく動揺して頭にはてなマークばかり浮かべる私の前で、綺麗に口角を上げて笑みを深めるだけの瀬尾を眺めていたけれど。
色々と短時間で起こりすぎてキャパをオーバーした頭は、限界を迎えてやがて睡魔が襲ってきた。
瞳を開けているのも少しずつしんどくなって微睡に誘われていく。
_待って、私、この男に言いたいことがずっとある。
そう思うけど、熱い息を吐き出すことしかできなくて。
その瞬間そっと頬に指が触れて、
「…もうちょっと、待って。」
そう囁かれた気がしたけど、もしかしたら夢だったのかもしれない。
次に目を覚ました時には、あの気怠い雰囲気を纏う男はいなかった。
ゆっくり起き上がると、ベッド脇のナイトテーブルに書き置きのメモがスポーツドリンクと一緒に置いてあるのを見つける。
“鍵はポストの奥の方に入れておく お大事に“
整った、少し右上がりの字。
短文のそれをそっと撫でるように触れた後、冷蔵庫へ向かった。