君と私で、恋になるまで





「…気合入ってるな。」

「それはもう。佳境だからね。」


肩にかけたバッグにタブレットを突っ込みながらそう答えると、隣をのらりくらり歩く男は、顔だけをこちらに向ける。



「………終わったら打ち上げやるか。」

「…?

香月さんのチームと合同でやると思うよ。」


「ちげーわ。俺とお前で。」


いつものロートーンで、なんてことない提案のように告げてくる瀬尾に私は目を何度か瞬いて。

それから、じわりじわり、男の言葉を頭に流し込めば、簡単に顔に嬉しさが滲む。



「……定番のおつまみ3種類はマストだね。」

あとは必ず最初に頼むクリームチーズの味噌漬もだなあ、と考えながら微笑むと今度は目の前の男が何度か形の良い瞳を瞬く。




「…え、あの居酒屋行くの。」

「え、違うの?」


「それ打ち上げじゃなくていつものやつだろ。」

「まあそうだけど…、でも私は好きだよ。」


あの居酒屋で、この男と向き合う時間が1番好きだ。

その気持ちを込めつつ伝えると、瀬尾は「おっさんは欲が無いな」と割と失礼なことを呟いてくれつつも、困ったように破顔した。






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