君と私で、恋になるまで
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あっという間に、決戦の日はやって来た。
いつも通り出社して、朝一で会社に設置されているメーカーで淹れたコーヒーで喉を潤す。
少しだけぬるくなっているそれは、逆に穏やかに身体へと染み込んでいくようだった。
1つ静かに呼吸をして、△社での打ち合わせで説明する予定の内容を綴った資料を見直す。
他の案件が待ってくれるわけでは無いから、この1週間そればかりを考えるわけにはいかなかったけど。
それでもやはり、今日のことをどこかで意識して生活していた気もする。
「枡川ー、今データ送っといたから。」
「あ!!そうでした、ありがとうございます!!」
「こんな分厚いカタログの元データ貰ってまじでどうすんの。」
「…家具に拘りたいって要望があったので、聞かれたことに正確に答えたいですし…」
オフィス家具メーカーとして、扱う商材を掲載しているオリジナルのカタログは数百頁にも渡る。
今日がどういう話の展開になるか分からないけれど、松奈さんが興味を持ってくれた内容にはその場で出来る限り返答ができるように。
カタログの制作を担当している先輩に、あるだけのデータをください、と無茶なお願いをしていたのだ。
「企業パンフレットはもう送ってあるんだろ?それ見て貰えば大体、うちの会社がどういう案件やってきたか分かるじゃん。」
私の行動が不可解だと、ありありと顔にも言葉にも乗せる先輩に苦笑う。
それはまさしく、その通りだ。
依頼をオファーしてくれた企業へは、カタログ制作部が作成した企業パンフレットや、依頼後の今後の流れをイラスト化した冊子が送られている。
そこには今までうちの会社が手掛けた案件の紹介がされているから、きっと雰囲気を掴むことはできる。
だけど完成図だけでは、見えないことも沢山あるから。
私は先輩に深々とお礼を告げて、データのチェック作業へ移った。