君と私で、恋になるまで




人気の家具は、ある程度詳細も頭に入ってはいるけど、シーズンで勿論新商品も増えるし、向こうの要望によっては自分もあまり知らない家具を扱う時もある。

社会人になったって勉強の連続だし、なんならその幅だけが無限に広がって、自分で何を学ぶべきかの的を絞るのがより一層難しくなっている気がする。



頬杖をついて、パソコンに向かって睨めっこを続けていた時だった。




画面の右下で、メッセージ受信の通知バナーが表示された。

【差出人 : 瀬尾 央】


文字を目に入れるだけで即座に跳ねる胸をそのままに、チャットを開く。


《お疲れ。元気?》


その短い文章だけでも何故だか気怠さが見えて少し笑う。

《お疲れ様。元気です。そちらはどうですか。》

《普通。古淵のチャット攻撃がだるい。》



なんだそれ、と突っ込んでいると続けて

《今日の夜、行く?》


のらりくらりとした誘いが来て、やはり笑ってしまう。この男の絶妙なタイミングは何なんだろう。

今まで顔も身体もかたく緊張させてパソコンに向き合っていたけど、肩から少しずつ、力が抜けていく気がした。


《行きましょうか。華金ですからね。》

《体調は大丈夫ですか。》

《お陰様で。》

《今日は午後からは会社にいますか。》

《取引先と打ち合わせの後、午後戻ってきます。》

《了解。》


瀬尾には、今日△社と打ち合わせがあるという話は勿論していない。

担当を引き受けた時から心配をかけていたし、態々伝えてより一層気がかりにさせるのは申し訳ない。
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