君と私で、恋になるまで
◻︎
オフィスに戻った私は、足早に自分のデスクへ向かう。
バッグからパソコンを取り出してすぐに電源を入れた。
《おつかれさま。後で、話できる?》
まだ起動中だよとパソコンのデスクトップが告げてきても、私はいてもたっても居られなくなってチャットの画面を直ぐ様開いてそう打ち込む。
お昼休みにしては少し遅めだと言える13時半過ぎ。
なかなか既読がつかないそれに、私の焦燥感はどんどん募っていく。
夜まで、もう待っていられそうも無い。
___今すぐに、あの気怠くてゆるい笑顔が見たい。
「ま、ますかわ!!!!!」
「っ、びっくりした…どうしたの古淵。」
そんな風に降り注ぐ気持ちを抱えて画面を一心に見てしまっていたから、すぐ隣から聞こえた大きな声に最大限に身体をびくつかせる。
そこには、まるでムンクの叫びかのようなポーズをした古淵が立っていた。
「瀬尾が〜〜会社辞めるかもしれん〜〜」
「…………え?」
そうして絶望的な声色で伝えられた内容に、私の身体は金縛りにあってしまったかの如く、全く動かなくなった。