君と私で、恋になるまで
「……瀬尾は、今オフィスにいる?」
「いや、その会社の担当者に呼び出されたみたいで、昼休み使って外出てった。」
「そ、か…」
どおりで、チャットは既読がつかない筈だ。
未だポツンと送信されただけの私のメッセージは、まるで思いが届くことなくずっと彷徨う自分のようで。
いとも簡単に、先程までの勢いを失いそうになってしまう。
「___だから、ぬるいっつったのよ。」
その時、隣同士で古淵と話す後ろから、馴染みのある声が不機嫌さを多量に含んで投げられた。
「…亜子。」
「仕事が落ち着いたらって、頑張るあんたのことを否定するつもりは無いけど。
先送りして、後に延ばして。
あの男がその間に居なくなっちゃったらどうするの?」
今週の初め。
亜子は、うどんを食べながら私に喝を入れた。
「……たしかに、私はぬるいね。」
臆病で、どうしようも無いヘタレで。
"同期"
そこから抜け出したい、抜け出すのが怖い、
相反する気持ちを抱えたまま、ずっと同じ場所に居た。
気怠くて、のらりくらりと、いつだって翻弄してくるあの男への気持ちは、自分が1番、嫌になるほど分かっていたのに。
「……遅めの昼休み、私も今から取れるかな、」
「良いんじゃない?行ってこいハレンチOL。」
こてん、とやけに可愛らしく首を傾けて微笑む亜子に、緊張の中でも少し顔が緩む。
誰がハレンチOLだ。
そう反抗したかったけど、やっぱりそれは否定も出来ない気がして、ただ力無く笑った。
「古淵、瀬尾がどこのお店行ったかとか聞いてないよね。」
「…え、ああ、うん。
でもあいつ飯食ってから行ったから、カフェとかだと思うけど。」
私と亜子の会話に恐らくあまり着いて来ては居ない古淵が、戸惑いながらもそう教えてくれた。
会社近くのカフェなんて、一体いくつあるんだろう。
途方もない答え探しに、会えるかどうか不安は過ぎる。
だけど。
いつだって、いつの間にか。
私を支えてくれる、背中を押してくれるあの男に
伝えたい気持ちがとっくにある。
椅子から立ち上がった私はそのまま、オフィスを飛び出した。