君と私で、恋になるまで
「…私、瀬尾が同期で良かった、」
"仲の良い同期"
そこから抜け出したい。
それだけじゃもう足りない。
私はそればっかりで。
研修中のあの夜、蚊に刺されるって文句言う癖にずっとそばに居てくれた。
プロジェクトのリーダーを辞めるべきか悩んでた時、悪戯に笑って香月さんの会社で私を迎えてくれた。
へんてこな蛍光イエローのTシャツで、あの大勢の人の中から見つけ出してくれた。
のらりくらり、いつも気怠い様相のくせに。
関わる案件に最後まで真剣に取り組むところも、お酒を飲んだらちょっと笑い声が増えるところも、本当はそんなにお洒落な店が得意じゃ無いところも。
全部が、愛しくて大切で。
そしてそれら全て、この男と同期として過ごした日々の中で、時間をかけ過ぎるほどにかけて、育ててきた気持ちで。
その感謝を伝えようとしたことは、今まで無かった。
居心地のいい優しさに触れて、甘えていた。