君と私で、恋になるまで





「……3年前の宿泊研修のあの日。
お前が恋愛で傷ついて泣いてたって知ってる。」


「………え?」


「まだ、そんな簡単に癒えてないかもしれない。

傷は残ってるままかもしれない。

それがずっと気にかかって、言えなかった。


……まあ後は俺の問題だけど。というかそれが大半だけど。」




囁くように告げる瀬尾は自嘲的に笑った。

そうして、やはり解した目元で私を簡単に射抜いてしまう。


「…枡川。」

「……は、い。」


掠れる声でなんとか返事をした私へ穏やかに笑う男が、思った以上に近い距離にいることに気づいて胸がドキン、と分かりやすく跳ねた。





「____次にもしお前が恋をしたいって思えた時は、

その相手は誰にも譲りたく無いんだけど。」


「、」


言葉が、うまく出ない。




あの夜、私が1つの恋を終えたことを最初から知っていて、それでも何も言わず、ずっと見守ってくれてたの?


___枡川。まだ、あの人が好き?


あの同期会の日に言われたことを思い出す。



いつも私の気持ちをすぐに汲んで、いつの間にか掬い上げてくれてしまうのに、どうして自分自身に向かう気持ちだけには疎いんだろう。



私はずっと、


「……あの日、私、区切りをつけられたんだよ。」


「え?」

「瀬尾が傍に居てくれたから、

私はちゃんと泣いて、ちゃんと笑えた。」




"まあ泣きたい時は泣いとけばいいんじゃない。知らんけど。"

"……適当だなあ。"



____ずっと、この男のことが好きに決まってる。





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