君と私で、恋になるまで
そう自分の気持ちを反芻すれば、目の前の気怠い人影がぼやけて一層滲んでいく。
だけど、もう自分1人で抱えていられないくらいに想いは溢れてしまっている。
_____伝えたい。
言葉にしようとしたら色んな感情が突っかかって喉がひくついたけれど、負けじと紡いだ。
「……瀬尾が、大事なんだよ私、
同期としてもだけど、それだけじゃ無くて、
とっくに、ずっと恋してるよ…っ、」
ぽろぽろと、1度流れ始めたらもうこの涙は止められないって分かる。
掴まれていた腕と反対の手で、それでもなんとか拭おうとした瞬間、
「っ、」
ぐ、と強く優しい引力に導かれるように、簡単に瀬尾の腕の中に身体がおさまってしまった。
あっという間に心地の良い温度に包まれた自分の身体も、心臓も、強張っているのが分かる。
「………本気?」
私の左肩に顔を埋めてぎゅう、と腰を少し折るようにして強く抱きしめてくる瀬尾は、やけに熱を孕んだ声で囁いた。
「…こ、こんなこと冗談で言えると思いますか。」
「思いません。」
私の問いかけをあっさり否定した男はクスクスと空気を揺らす。
ちょっと揶揄うようなその声さえも愛しくて、あまりに近く感じられる嬉しさを抱えたら、それと同時に思い出してしまった。
"凄い大手の企業から、瀬尾と働きたいって連絡来たらしいんだよ"
「…瀬尾、」
「ん?」
「…もし、これから同期じゃ無くなるとしても、傍に居たい。私も、譲りたく無いよ。」
不安気で頼りない声になったけど、そう伝えれば抱きしめられていた腕が急にその拘束を緩めた。
少し距離ができて、私を真っ直ぐ見つめる綺麗な瞳は不思議そうに瞬かれる。
「……なんで同期じゃ無くなんの?」
「…え。」