君と私で、恋になるまで
episode09.
「君と私で、」
fin.
懸命に仕事を頑張るあいつが、
笑ってくれたらもうそれで良いかもしれない。
そんな気持ちで、
皇先輩や保城さんにも協力してもらったけど。
「……瀬尾が、大事なんだよ私、
同期としてもだけど、それだけじゃ無くて、
とっくに、ずっと恋してるよ…っ、」
俺を探しにきて、
真っ赤な顔でそんな風に告げる
この女のことが、最初から好きだった。
嗚呼、やっぱり。
笑ってくれたらそれで良い
なんて、綺麗事は言ってられない。
"俺が"、こいつの笑顔の隣に居たいし、譲れない。
お酒を飲むとタコみたいに
顔が真っ赤になるところも、
仕事でタクシーは簡単に使わないと
少しムキになって怒ってくるところも、
クライアントに度が過ぎるくらいに
丁寧に接するところも、
クールで涼しい顔立ちをして、
笑ったらめちゃくちゃ可愛いところも。
同期として、1人の人間として、
俺には、全部が愛しい。
一生ちゃんと大事にする覚悟くらいは、
全然あるけど。
俺は多分それをこいつに伝える時は
また絶対、苦労しそう。
自分のヘタレさにやっぱり
苦笑いを漏らしながら
それを悟られないように、
腕の中にいる枡川にキスを落とした。