君と私で、恋になるまで
epilogue
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「……で?ちゃんとヤッたわけ?」
「………」
私は今来たばかりのアイスティーを簡単に吹き出しそうになったけど、なんとか耐えた。
以前の失敗を活かせた。
そうやって学んで社会人は成長していくのだ、多分。
月曜日のAM 11:50。
よく来ている、店内の雰囲気までお洒落だと評判のイタリアンレストラン。
真昼間からとんでもない発言をかましてくれる亜子とのランチは、本当に毎回気を抜くことができない。
目の前で、頬杖をつきながら注文したパスタを待つ彼女を睨むけど、全然まったくもって気にしていないご様子。
「……ノーコメントでお願いします。」
「ねえ嘘でしょ?
どヘタレがやっっっっと両想いになって、しかもそれが華の金曜日で、週末またいで何にも無かったとかぬかすわけ?」
とうとう、どヘタレと言われてしまった。
「土曜は私、現場の立ち会いあったから休日出勤だったし。瀬尾も新しいプロジェクトの方で仕事溜まってたみたいだから、土日は会えてないよ。」
「仕事なんか放り出せそんなもん!!」
「……そんなことして、もし自分が急にその仕事振られたらどう思う?」
「そいつシめる。」
「……無茶苦茶では?」
横暴な亜子の発言に頭痛がしてきた。
なのに目の前の彼女の方が難しい顔で頭を抱えているから、よく分からない。
「…あのさあ。仕事熱心なのも結構だけど、付き合ってからもそのよちよちスピードでいくの?」
「……」
「おいそこの天然記念物。
付き合った、に照れるのやめてくれる?」
うるさいなあと呟きつつ、赤くなった顔を少しでも落ち着かせたいと再度アイスティーを喉に流す。
「……そりゃ私だって会いたかったけど。」
カラン、と氷が少し溶け出して奏でる音を耳に入れつつぽつりと飛び出した言葉は本音だった。
だけど、先週の金曜日、パソコンで共有のスケジュールを見てたら、あの男のびっしり詰まった予定表にびっくりしてしまったのだ。
「天然記念物のちひろちゃんに、良いこと教えようか。」
「……なんですか。」
もう突っ込むのも面倒で、やけになって従順に聞き返す。
「世の中、"彼女の特権"というものが存在します。」
「……はい…?」
「それを使えば、いつでも押し倒せるわよ。」
「なんの話ですか?」
凄くありがたい話でもいただけるのかと思ったらハレンチOLで話題が決着を見せて、やはり頭が痛い。
ケラケラと笑う亜子が、そんな中でも急に「まあ、とりあえずおめでと。」なんて言うから、結局釣られて笑った。