君と私で、恋になるまで
「…昨日、がっつりしたもの食べたいって言ってただろ。」
「うん…?」
確かに電話でそう言った。そしてこんな夜中に元気だねって若干引かれたのも思い出した。
「焼肉、予約した。」
「え!!!」
今日は仕事が終わったら元々落ち合う約束をしてたけれど、いつもの居酒屋に行くのかと思ってた。
それも、勿論嬉しいけど。
驚きの声と共に「肉」と聞いて私の輝いた目を確認したのか、瀬尾はゆるい笑みを浮かべながらコーヒーカップに口を付ける。
「……仕事が早いね。」
「うん、俺もそう思う。」
「……」
なるほど今日は、謙遜はしない日らしい。
それでも私は嬉しさが脳内の殆どを占めてしまっているので、じわじわと表情が緩んでいくのを止められない。
「絶対定時、頑張るね。」
「ん。」
コーヒー飲んでるだけなのに、なんだか結局様になってしまうんだよなあと思いつつ「じゃあまた後で」と告げようとした時、
「なんの話!?!?」
少し距離が離れた状態で話をしていた私と瀬尾の間に割って、同期で1番確実にいつも元気な古淵が笑顔で入ってきた。