君と私で、恋になるまで






「…昨日、がっつりしたもの食べたいって言ってただろ。」

「うん…?」

確かに電話でそう言った。そしてこんな夜中に元気だねって若干引かれたのも思い出した。



「焼肉、予約した。」

「え!!!」


今日は仕事が終わったら元々落ち合う約束をしてたけれど、いつもの居酒屋に行くのかと思ってた。

それも、勿論嬉しいけど。


驚きの声と共に「肉」と聞いて私の輝いた目を確認したのか、瀬尾はゆるい笑みを浮かべながらコーヒーカップに口を付ける。




「……仕事が早いね。」

「うん、俺もそう思う。」 

「……」


なるほど今日は、謙遜はしない日らしい。

それでも私は嬉しさが脳内の殆どを占めてしまっているので、じわじわと表情が緩んでいくのを止められない。


「絶対定時、頑張るね。」

「ん。」


コーヒー飲んでるだけなのに、なんだか結局様になってしまうんだよなあと思いつつ「じゃあまた後で」と告げようとした時、


「なんの話!?!?」


少し距離が離れた状態で話をしていた私と瀬尾の間に割って、同期で1番確実にいつも元気な古淵が笑顔で入ってきた。




< 220 / 314 >

この作品をシェア

pagetop